税金を払わない巨大企業

「税金を払わない巨大企業」
 富岡 幸雄著

少し難しい箇所もあるかと思いますが、おススメの本です。全体として税の公平性を主張されていて、単純な大企業批判ではありません。そのうえで、現在の税制の在り方について、そして自らの利益をどん欲に追及する大企業の姿勢も問題視しています。

  • 資本金一億円以下の法人には、中小企業に対する軽減税率が適用されるため、法定基本税率より低くなることは当然といえます。ところが資本金「1000億円超」の巨大企業の法人税実効負担率が「1000万円以下」の企業より半分以下であることが、日本の税制の問題なのです。
  • 日本の法人税制が大企業を優遇する一方で、中小企業には優遇措置が適用される条件が整っていない
  • 企業が成長すれば、国民に雇用の機会が与えられて給与も上がって生活が豊かになる。そうすれば、国の税収も増えて国民経済が繁栄する。このような公共的な使命感を持つ企業が多くありました。(略)ところがグローバル化時代を迎えた今、短期間で大きな利益を得ようとする風潮が強まっています。
  • 企業はできるだけ税金を低く抑えて海外の低税率の国々に運び去ろうとしています

本文中では表資料から日本の有名大企業の数社(実名で!)が、かなり低率の税負担しかしていないことを明らかにしています。例えば資本金100億円以上の巨大企業の法人税実効負担率(9.67%)が、資本金1000万円以下の企業の半分以下であるということもきちんと指摘しています。
当然企業の立場からすると、別に違法行為を行っているわけではいという反論はあると思いますが、問題は、そのような税体系で良いのかという問題です。税制の公平性とは、所得が大きいものが多く負担するという「応能負担」を原則としています。しかし、日本税制の現状は、「公平」になっていません。
 
税制の問題として、富裕層に対する優遇ぶりにも言及をしています

  • 日本の所得税には、看過できない重大な不公平がある
  • 日本の所得税負担率は合計所得金額が1億円の段階の28.3%がピークになっています。しかしそこからさらに2億円、5億円、10億円と合計所得金額が高くなるに従って所得税負担率は逆に下降するようになり、100億円になると、実に13.5%まで低下しているのです。
  • 日本社会は、現在、税を逃れる手段を持つ1%足らずの富裕層と、その尻ぬぐいをするように重税に苦しむ99%を超える貧困層とに二極分化しつつあります。富める者はますます富み、貧する者はますます貧する。

税金の使い方、集め方はまさしく政治の問題です。不公平な部分はきちんと改めていく。このことが強く求められていると思います。