社会保障が経済を強くする

「社会保障が経済を強くする ~少子高齢化社会の成長戦略」
盛山 和夫著

経済学者や評論家、果ては一般の国民からでさえ、「社会保障を減らすべき」という意見が出ます。しかし、社会保障は経済成長にとって本当に「悪」なのでしょうか?本書はそこを問題提起として、社会保障の充実を主張しています。

以下の主張を展開されています。

・「福祉にお金をかけることは、経済的な生産に寄与しないものにお金をかけることだ」という考え(中略)「働いている人の所得が減らされ、働いていない人に配分される。それは、経済的な非効率以外の何ものでもない」そうした見方が、ここにあります。しかし、この見方は完全に間違っています。
・医療費に関しては、はっきりと「経済的にも負担ではない」ということができます。
・(病院にとっての支出は)大まかにいって、医療機関で働いている人の個人収入が約半分、医療機関に薬や医療器具を販売したり、医療施設の建築・改修などを請け負ったりしている業者の収入が残りの半分となります。(中略)医療サービスの提供が嘘偽りなく「経済活動」だということを意味しています。
・医療費のほとんどが経済活動そのものであるということを理解すれば、たとえば鈴木亘氏の『社会保障亡国論』がいかに誤っているかもお分かりいただけると思います。

このことを踏まえ、本書の核心に続きます。

・内需拡大の最大の阻害要因となっているのが「人口減少」です。
・子どもの数がどんどん減少している地方では、多数の小中学校が廃校となり、多くの小売店が廃業に追い込まれていっています。そうしたところで、経済が成長するはずがまったくありません。
・内需拡大を基軸とする日本経済の成長にとって、人口の減少をできるだけ食い止めることは最大の成長目標になります。人口の増加まで展望するのは現時点では無理ですが、減少スピードを大幅に遅らせることはできます。
・社会学的には、「今日の社会では、かつてのような家族や地域社会からなる小さな共同体は(中略)実態としてもできていないし、まして理念的にも正しくない。
・経済学的には「成長は<投資>によって生まれる」という事実が決定的に重要です。

と述べられ、福祉分野への投資、特に子育てしやすい「共同子育て社会」を提唱し、積極的な投資で経済成長を促すよう主張されています。
主張そのものは大いに賛同できます。ただ、その財源を消費増税で補うという考えには私は賛同しかねます。