地域再生の罠

「地域再生の罠」

久繁 哲之介著

まず表紙の裏に書いてあるリード文(?)が素晴らしいです。

  • 市民を蔑ろ(ないがしろ)する都市は必ず衰退する。どんなに立派な箱物や器を造っても、潤うのは一部の利害関係者だけで、地域に暮らす人々は幸福の果実を手にしていない。本書では、こうした「罠」のカラクリを解き明かし、市民が豊になる地域社会と地方自治のあり方を提示する。

地域再生をテーマにした本ですが、各都市の地域再生策の多くが失敗だと断罪しています。それは政策が単なる他都市の成功事例を模倣したものであり、地域の特性を活かしたものになっていないからだと指摘します。普通、政策は、さまざまな調査を行います。自治体も事業の効果を評価するのによくアンケートを実施しますが、その調査に疑義を呈しています

  • 民間企業であれば顧客の意向を把握するための努力を市場調査という形で行い、その精度の改善に工夫を重ねている。では、地域再生の専門家や自治体は、市民の不満や本音を把握するために、どのような対応をしているのだろうか。驚くことに、なんと3割もの自治体が、地域住民の意向をまったく把握しないで計画を策定している。残りの7割にしても、ごく簡単なアンケートで地域住民の意向を把握したつもりになっている。
  • ハーバード・ビジネススクールのロヒト・デシュパンデ教授の研究報告によれば、「市場調査の80%以上は、新たな可能性を試すことや発展させるものではなく、主としてすでにある結論を強化するために使われている」という。

つまり、恣意的にアンケート結果を活用し、効果が薄い事業でも効果あるようにし、本当の意味での地域住民の声が反映されず間違った政策が続けられている。それが地域再生がうまくいかない原因の一つだと指摘しています。

 

本書では地域再生策の立案、実行が【住民目線・消費者目線】になっていないことを終始一貫して指摘しています。

ひるがえって、大分市。閑散とした駅前の祝祭の広場を見ていると、この施設は本当に市民の憩いの場になっているのか疑問です。拙速に、臨時議会までやって土地を買い上げ、施設整備をし、市民の声はどこまで反映された施設なのでしょう。大分市の地域活性化に対する姿勢が顕著に表れている施設だなと思います。

街づくりについて、考えさせられた一冊でした。