アジア辺境論

「アジア辺境論 これが日本の生きる道」
内田 樹  姜尚中 共著

さて、今回紹介する書籍は内田さんと姜さんの共著。アジア論です。一言でいうと日本と韓国と台湾の連携を進め、大陸的支配を強めるアメリカ、中国、ロシア、EUなどに対抗できる経済圏の確立を提唱されています。10年くらい前に「日中韓はひとつになれない」 (角川新書 小倉 紀蔵 )といった書籍がありましたが、日台韓の連携は、おもしろい提唱だとおもいます。 さて、印象に残った点ですが、第一章で日本の経済見通し、公共交通、コンパクトシティ構想について言及されています。

内田: 日本の地方は急速に高齢化が進み、限界集落が増えています。政府が出してきた「コンパクトシティ」構想というものがありますけど、これは、これからもう里山には行政コストをかけないという宣言だと僕は理解しています。(略)すでに日本各地でJRの赤字路線が廃線になっていますけど、あれはまさに「採算のとれない公共的な活動は廃止して当然である」というロジックに基づく「国土放棄」の先駆的形態だと僕は思っています。(略)
自分の好きで「不便なところ」に暮らしている人間が、税金で「便利にしてくれ」」というのは筋違いだ。道路を直したければ、自己責任で、自分の金で補修しろという人間がでてきます。必ず出てくる。

そんな事言いそうな人、身近にもすでに2~3人は顔が浮かんでいます(笑)。経済的な諸政策を否定するものではありませんが、誰かの犠牲を前提とした経済発展は民主的ではありません。やはりおかしいと思います。
しかし、そうした「国土放棄」や「棄民政策」といわれる経済政策を支持する勢力が、一定国民の支持を得ているという事実もあります。民主主義について言及もされています。

民主制下においても、有権者たちはしばしば熱狂的に独裁制への移行を支持することがある。(略)民主主義というのは、よほど警戒心を持って扱わないと、いとも簡単に独裁制に移行する
民主制から独裁制への移行をもたらすのは、最終的には知性の疲労だと思います。(略)。「複雑な話」を「単純な話」に還元しようとする誘惑は常に存在します。「反知性主義」というのはこの誘惑のことです。(略)「難しいことを考えることをむしろ好む」ような傾向をどうやって創り出すか。それが民主制を守るための思想的な急務ではないか。僕はそんなふうに考えています。